別れるための28日の蜜日
部長にちょっと申し訳なく思いながらも、これだけは譲れない。

「申し訳ありませんが、今週はダメなんです。来月からは遅くなっても頑張りますから」

罪悪感が湧いてきて、少し語気を弱めてフォローを入れるが、部長の眉はハの字のままだし机の上の書類も撤回されない。

「何か急ぎの処理ですか?良かったら僕やりますけど」

ひょい、と私の後ろから顔を出した町田さんが机の上の書類を見た。

「あぁ、出張費の申請ですか。これくらいなら大丈夫ですよ。今日は他に急ぎの仕事もないので、やっておきます」

書類をペラペラと捲ってにっこりと笑った町田さんを見て、部長の表情も晴れる。

「いいかね?町田君、本当に助かったよ。実は引き出しにしまったまま、うっかり忘れててね。さっき確認の電話をもらって思い出したトコだったんだ」

部長はハハハっと笑って話しているが、忘れられていた人にとっては笑い事じゃないだろう。チラリとみえた書類の日時は2週間も前だったし。

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