摩天楼レボリューション
すると今度は、分厚いファイルを持った別の男性スタッフさんが現れる。


「こちらワインリストでございます」


これがグルメ番組なんかではもうすっかりお馴染みの、庶民の私でも存在を把握しているソムリエさんとやらなんだろうな、と思いつつ、黒須さんとのやり取りを見学した。


「う~ん。これまた見事なまでにちんぷんかんぷんだな」


黒須さんは苦笑いを浮かべ、続ける。


「えっとですね、料理はメニューに載ってる写真と同じ物を注文したんですけど、それに合うワインをそちらで選んでいただいても良いですか?」

「はい。承知いたしました」

「なるべく渋みや酸味がないやつで、なおかつ価格はここら辺のものが良いんですけど…。どこ産とか何年物とかは全く拘りがないです。と言いますか、正直全然分からないので、解説は不要です」


リストを指差しながら要望を伝えていた黒須さんはそこで再度苦笑した。


「すみません。思いっきり無知な客で」

「いいえ。とんでもないことでございます。お客様にお酒の味を楽しんでいただけるよう、お手伝いするのが私の使命ですから。何なりとお申し付け下さい」


ソムリエさんは微笑みながら如才なくフォローする。


「あ。それで、彼女はまだ未成年なので、ワインはいただけないんですよ。なので、何か他の飲み物をお願いしたいんですが」
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