摩天楼レボリューション
メニューをきちんと確認していなかったし、スタッフさんも黒須さんも口には出さなかったので正確な金額は把握していないけれど、おそらく一人数万円はするであろう食事代を出してもらうのだから。


「いえ。どういたしまして」


それに対し、黒須さんは微笑みを浮かべながら返答してくれた。

視線を合わせながらの、久しぶりのまともな会話にちょっぴり胸がドギマギする。

その後、袋に入れてもらったワインを手にした黒須さんと共にフロントへと向かい、預けた上着と荷物を回収して、レストランを後にした。

無言で歩く彼の半歩後ろを付いて行き、エレベーター前まで到着した所で、ふと、何気に視線を巡らせた私は思わず呟いた。


「あ…」


来た時はさっさと通り過ぎてしまったから気が付かなかったけど、左手突き当たりの壁がやはりガラス張りになっていた。

思わずフラフラと歩を進め、そこまで接近する。


「すごいね…」


つられて移動して来た黒須さんが私の横に立ち、ポツリと呟いた。


「53階からの眺めっていうのはやっぱり圧巻だな。レストランでも夜景は堪能できたけど、窓際の席じゃなかったからこんな真下まではじっくりと観察できなかったもんね」


私は無言のままコクリと頷いた。


「まさに『摩天楼』だな」

「…え?」


しかし、黒須さんの口にした単語が気になり、思わず聞き返す。
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