摩天楼レボリューション
自分の暴言を再現されて、羞恥心で何も言葉を返せない私に、黒須さんは続けた。


「俺も深く暗い闇の中にいたから分かるんだ」


ちょっとだけ声のトーンが変わった事に気付き、心がざわめく。


「これからの長い人生、共に歩んで行くつもりだった恋人に先立たれて、どん底まで落ち込んだ」

「……え?」

「さっきの話の中に出てきた彼女。4ヶ月前、交通事故で亡くなったんだ」


衝撃告白に、私は思わず言葉を失った。


「訳が分からないうちに葬儀が終わり、ぼんやりしながら日常生活を送っていたんだけど、ある日突然倒れちゃってさ。食事は喉を通らず、細切れの睡眠しかできていなかったから、心と体がズタボロになってしまっていたんだ。それを立て直すのに3ヶ月もかかっちまったよ」


とてもそんなヘビーな経験を語っているとは思えないくらい黒須さんの声音、表情は穏やかだった。


「それでさっきも言ったように、今月からようやく仕事に復帰できたって訳。だけど、イブ直前になってホテルから予約の再確認の電話が入って、その事実を思い出したんだ。キャンセルしようとしたんだけど、すぐに思い留まった」


そこで一旦言葉を切ってから黒須さんは続けた。


「彼女と過ごす筈だった夜を、一人でなぞってみようかなって思って」


胸の奥から込み上げて来るものがあったけれど、私は必死に我慢した。


「それが彼女への供養になるかなと」
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