摩天楼レボリューション
黒須さんが耐えているのに、私が泣く訳にはいかない。


「数日後レストランからも連絡が来て、同じく予約の取り消しはしなかった。その時人数が変更になる事を伝えれば良かったのに、何故か失念してしまっていたんだよな。で、後はさっき言った通りの流れ。男一人で食事をするのはさすがにいたたまれなかったから、君が付き合ってくれて、ホント助かったよ」


黒須さんは『ふ、』と微笑んで続けた。


「おかげでとても楽しい一時を過ごせた」


「…そんな事があったのに、よくそこまで立ち直れましたね…」


言ってしまってからあまりにも気がきかな過ぎでバカな質問だと後悔したけれど、今さら時は戻せない。


「ホントだよな。まさかまたこうして普通に生活できるようになるとは思わなかった。でも、だからこそ俺の話には信憑性があるだろ?」


しかし黒須さんはちょっぴりおどけながらそう返してくれる。


「人間て、とても繊細で脆くもあるけど、何かきっかけがあれば、途端に、尋常じゃない自己修復能力が作動するんだよ」


本当に、この人は何て……。


「もちろん、家族や友人、同僚達が支えてくれていたからこそ、その「きっかけ」が作れたんだけどね」


そこで黒須さんは私をじっと見つめて来た。


「君にも必ず、そういう人が周りにいる筈だ。どうかそれを忘れないで欲しい」


そのまま私達はしばし無言で見つめ合った。
< 41 / 56 >

この作品をシェア

pagetop