男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「それから、どうなったの?」と目を輝かせ、ワクワクした顔をして話の続きをせがむから、調子に乗った私はつい、余計な話もしてしまった。
「僕には双子の妹がおります。彼女は僕と正反対の性格で、小鳥や花を愛し、家の中にいることを好みます。
僕としては、外の景色も見せてやりたいと、ある日、無理やり妹を馬に乗せて……」
兄のステファンを馬に乗せたときの話。
私が前で手綱を持ち、兄は後ろで私の背中にしがみついていた。
馬に乗ると目線が高くなり、私は爽快に思うけれど、ステファンは怖かったみたい。
「降ろして!」とステファンが泣いて私の体を揺するから、驚いた馬が暴れ出し、ふたり揃って落馬する羽目になった。
馬は走って逃げてしまい、ステファンは足首を捻挫して泣いている。
それで仕方なく、私より背が高く体重も重いステファンをおぶって丘をひとつ超え、家まで歩いて帰ったのだ。
笑い話として、その話をしたつもりでいた。
しかしリリィは小首を傾げ、大公殿下は口元に運ぼうとしていたワイングラスを宙に止めて、私を見た。
自分の犯したミスに、まだ気づけぬ私。
『兄』という言葉はちゃんと『妹』に変換して口にしたし、ふたりはなにに引っかかっているのか……。