男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
給仕のために出入りしている他の使用人もいるためか、クロードさんの口調は畏まったものだった。
大公殿下はナイフとフォークを置いて、席を立つ。
「いや、すぐに聞きたい。執務室に移動しよう。
ステファン、すまないが、リリィの相手をしてやってくれ」
「はい」
大公殿下とクロードさんが部屋を出て行くと、リリィとふたりきりになる。
正確にはふたりきりではなく、執事やメイドが後ろに控えているけれど、会話の相手はリリィだけだ。
なんとなく落ち着かなくて室内に視線を配ると、ドア側の壁に、複数人を描いた肖像画が飾られていることに気づいた。
夫婦と思われる男女と、少年がふたり。五歳と三歳くらいに見える背格好だ。
リリィに「あの肖像画は?」と尋ねると、「家族」と言われる。
「私が生まれる前の絵なの。お母様は私を産んだ後、しばらくして亡くなられたそうよ。
みんな天に召されてしまって、今の私の家族はアミルお兄様だけになってしまったわ。
アミルお兄様は、お父様の右横にいる、大きい方の男の子よ」