男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
石畳の床には、白いチョークで正方形の枠が引かれている。その範囲で戦えということだ。
正方形からはみ出したら、マイナス一ポイント。減点は二点までで、マイナス三ポイントになると失格となる。
加点はというと、相手のバラの花を散らすこと。
私たちの胸と背中には、赤いバラの花が一輪ずつ貼り付けてある。
一輪散らすごとに一ポイント加点され、二輪散らせばそこで試合終了、勝者となる。
制限時間は砂時計が落ちるまで。
四人分の紅茶を淹れるためのポットを火にかけ、その水が沸騰するくらいの短い時間だ。
審判についてくれるのは、若く精悍な顔立ちをした青の騎士。
広い闘技場にチョークを引いた正方形は四ヶ所あり、私が立つ場所以外は、試合中。
木刀がぶつかり合う音や、観客の声援や野次で賑やかだ。
そんな中で「始め」の声が掛かり、私は目の前の九十八番の男だけに意識を集中させていた。
片手で木刀を握っている私に対し、男は両手で柄を握り、大きく振りかぶる。
それを見て、相手が剣術初心者だとすぐに気付いた。
そんな大きな動きは、隙だらけというものだ。
高い位置にある男の木刀が振り下ろされる前に、私は素早く動いて、彼の胸のバラを剣先で散らした。