男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「団長の息子さんですよ」
「やっぱり!」
黒い髪色と、大きな鼻が似ていたし、抱きつくほどの親しい間柄を考えれば、親子と想像がつく。
納得した後は、急に不安に襲われる。
団長の息子なら、遺伝的に優れた剣士の素質を持っていることだろう。
その上、常日頃、父親から稽古をつけてもらっているとしたら……。
絶対に優勝するという強気な気持ちが、ぐらついていた。
遠くの親子を、顔を引きつらせて見ている私に、ジェフロアさんは笑った。
「いつもの元気は、どこ行ったんですか?
相手が誰であっても、無鉄砲に突き進む。それがステファン様じゃないですか。いつものあなたらしくやれば、きっと、いい勝負になりますから」
無鉄砲……その言葉は、以前、大公殿下にも言われた覚えがあった。
誰の目にも私は無鉄砲に映るんだと苦笑いしたら、急に不安は溶けてなくなった。
女なのに性別を偽って、大公殿下の城にやってきた私は、確かに無鉄砲。
今更、なにを怖気付く必要があるというのだ。
窓から差し込むオレンジ色の光が、闘技場に温かなラインを引いていた。
少しの休憩の後に、いよいよ決勝戦が始まる。