男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
自分の頬を叩いて気合いを入れた私は、立ち上がって正方形の枠内の中央へ。
対戦相手の団長の息子と向かい合い、一礼してから構えた木刀の先を触れ合わせた。
きっと周囲は歓声で煩いほどなのだろう。
けれど、私の耳は審判の合図を待つだけで、他の声は聞こえない。
目は対戦相手しか映らない。
この緊張感が心地よくて、無意識に口元を綻ばせると、相手の眉間に皺が寄る。僕を見くびっているのかと、不機嫌そうだ。
そうじゃないのに。
私はただ……楽しんでいるだけなのに!
「始め」の合図を聞いた直後に、胸のバラを狙いにいく私。
相手の出方を探るのではなく、最初から全力でポイントを取りに行った。
その思い切りのよさは、相手にとって予想外だったようで、驚く彼の回避反応は僅かに遅れ、私の剣先が彼の胸のバラを掠めた。
残念ながら、花びらの一枚を散らしただけで、ポイントにはならず、彼が飛び退いて距離が開く。
今度は団長の息子が攻める番。
早い動きで右に左に揺さぶりをかけられ、二度三度と斬りつけられた。
辛うじて相手の剣を受け止めながら、実力差を感じていた。
やっぱり強い……。この人は、私より上だ。