男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
それを理解しても、私の笑みは崩れない。
自分よりも強い者に挑戦できることが嬉しくて、ますます胸が踊るような気持ちでいた。
そのことが、相手を不快にさせたようだ。
彼の歯ぎしりが聞こえ、その後に「バカにしてるのか?」と問う声も……。
違うと言ってあげたいけれど、防戦一方の私にはそんな余裕はなかった。
激しく打ち込まれて、ライン際に追い込まれた私は、白線を踏んでしまい、マイナス一ポイント。
突き出された剣の下を潜るようにして、なんとかライン際から離れるも、その際に背中のバラを散らされ、彼に一ポイントを与えてしまった。
その後も私は彼の剣を受け止めるのが精一杯で、劣勢のままに時間が流れていく。
試合時間は恐らく三分の二を過ぎていることだろう。
それでも不思議と焦りは湧かなかった。
勝敗よりも、どうしたら一矢報いることができるだろうかと、相手の動きだけに集中していた。
激しくぶつかり合う木刀から伝わる振動が、私の心も震わせる。
ああ、楽しいな……この時間が、ずっと続けばいいのに。