男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
私たちはお互いに一度ずつ白線を踏み越えている。バラの花は私の背中のものだけ散らされている。
だから敗者は私だと思っていたのたが、時間ギリギリで逆転劇が起こっていた。
肩をぶつけ合い、お互いが弾かれて転んだ結果、彼の背中のバラは潰れて散り落ちていた。
加えて、床についた彼の左手の小指の先が白線に触れていたそうだ。
従って、散らしたバラは一輪ずつ。ライン越えは二回となった彼が、私に負けたのだ。
審判の説明が終わると、割れんばかりの拍手と歓声に包まれる。
優勝という結果は嬉しいけれど、彼の方が圧倒的に強かったのに、いいんだろうか……。
挨拶をして握手を交わしつつも戸惑っていたら、クレマン団長が近づいてきて、私と彼の肩を同時に叩いた。
息子が負けてしまっても、不愉快そうではなく、むしろ嬉しそうに見えた。
「決勝戦が若いふたりとは正直驚いた。いい勝負だった。これからも精進するように」
「ありがとうございます」とお礼を言う私に対し、彼は目に見えて落ち込んでいて、納得いかない気持ちを父親にぶつけていた。
「父上、僕はなぜ負けたのでしょう?」