男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
これはもう、試合どころじゃない。
女だとバレたら身の破滅。大公殿下を謀った罪で罰せられるだろうし、父も加担していると見られて、家もお取り潰しになるかもしれない。
小走りでライン際に移動する。試合を終わらせるために、自ら白線を踏もうとしたのだ。
しかし、素早く反応した殿下に進路を塞がれて、木刀がぶつかり合う。
「どこへ行く? 俺はここだぞ。もっと斬りかかってこい」
白線を踏ませてくれない……。
それならばと背中を見せるも、「なにをしている?」とバラを散らしてくれず、怒られてしまう。
「俺をガッカリさせるな。真面目に攻めろ」
不愉快そうな顔で命令されては仕方なく、私は胸を隠しながら、形ばかりの攻撃を繰り返していた。
観客たちは騙せても、気持ちが入っていないことはすぐに見破られ、殿下の眉間の皺はどんどん深くなっていく。
怒ってる……。
それがありありと伝わってくるけれど、私にはどうすることもできない事情がある。
制限時間はまだなのかと、試合終了を願うばかりだ。
「つまらん」と、低く呟く殿下の声がした。
そして簡単に木刀をいなされ、後ろに回り込まれ、やっと背中のバラを散らしてもらえた。