男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「大公殿下に二ポイント。そこまで!」とクレマン団長の声がして、観客のたくさんの拍手が殿下に贈られる。
その拍手に負けないくらいの大声で、私はすぐに退場を願い出た。
「すみませんが、もう限界です。用を足しに行かせて下さい!」
大公殿下を讃える拍手はやんで、代わりにドッと笑いが起きた。
それは道化師に向けられるような笑い声で、恥ずかしさに私の顔は真っ赤に染まる。
私だって女だから、人前で用を足すなどと言いたくないのに、他になんと言って退場すれば不自然がないのか分からなかったのだ。
木刀を床に置いて、逃げるように闘技場を後にする。
この後は表彰式だと思うけれど、恥ずかしすぎて、ここへはもう戻れない。
トロフィーも賞金もいらない。後は勝手にやってくれという気持ちで走り、屋敷内の自分の部屋まで帰ってきた。
夕日は西の空の端を赤く染めるだけで、その光は私の部屋まで入って来ない。
薄暗い部屋の中には、ジャコブが灯してくれたと思われる、壁掛けのランプの明かりが、ベッド周囲を照らしてくれていた。