男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
大公殿下の冷たい対応に、私の中にエリーヌ嬢に同情する気持ちが芽生えていた。
私はドレスを着ないから、彼女のように殿下に話しかけることはないけれど、もし自分が彼女だったら……と、考えてしまったからだ。
だから、バルドン公爵が文句を言うのも無理はないと思う。
その一方で、気が乗らなくても舞踏会に参加しなければならない殿下の気持ちも分かるから、どっちに味方していいのか分からなくなっていた。
私は壁際に姿勢を正して立ちながら、三者の様子を見守っていた。
それまでは面倒臭そうにしていただけの殿下だったが、バルドン公爵に文句を言われて、ムッとした顔に変わる。
苛立ちを目元に表して、低い声で彼女の名を呼んだ。
「エリーヌ」
名前を呼ばれた彼女は、俯いていた顔をパッと上げて殿下と視線を合わせる。
その顔には期待がありありと。
口元が綻び、今度こそまともな答えをもらえるだろうと喜びかけていた。
「はい、殿下」
「それほどまでに知りたいのなら、教えてやろう。俺の好きな色は、泥のように汚い茶色だ。きっとお前によく似合うぞ」
喜びかけていたエリーヌ嬢の顔が、たちまち青くなる。
キラリと光ったのは、彼女の涙か……。