男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「大公殿下、お久しぶりにございます。ますますご盛栄のこと、お慶び申し上げ……」
「都はいつ来ても豊かで賑わっておりますな。それというのも一重に大公殿下の……」
殿下のご機嫌を取ろうとするような、お世辞合戦が繰り広げられ、殿下はきちんと受け答えしつつも、その眉間には微かに皺が寄っていた。
ここに着いたとき、『俺から離れるなよ』と命じられていたので、私はずっと殿下の斜め後ろに立っている。
こんなに近くにいるというのに、忙しそうな殿下と違って、私は挨拶合戦に巻き込まれていなかった。
田舎の落ちぶれ貴族などに、興味を示す人は誰もいないからだ。
離れるなと言われていたけれど、殿下に群がる人たちに押し出されるようにして、気づけば私は輪の外に。
どうしようと考えたが、人を掻き分けて殿下の側に戻ることはできそうにない。
それで窓際を離れ、広いホールの中をドア寄りの、料理の並ぶテーブルの方へと歩き出す。
お腹も空いているし、殿下の周囲が落ち着くまで、腹ごしらえでもしていようかと思って。
ご馳走の並ぶテーブルの前で、ローストビーフを切り分けてもらう。
小皿を手に立ちながら食べていたら、「ステファン殿!」と後ろから声をかけられた。