男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

殿下のリードは強引ではなく、優しく支えて自然に導いてくれる。

まるで私がどう動きたいのかが、分かっているかのようだ。

心を読まれていると思ったら、この淡い恋心も見透かされている気がして、急に恥ずかしくなり、顔が熱くなった。


私は今、ハッキリと自覚していた。

殿下が好きだと……。


サファイアのような瞳に見つめられると、鼓動が速まる。

それは嫌なドキドキ感ではなく、もっと温かで甘いリズム。

私ごときが殿下に恋をしたところで、実を結ぶことはないと分かっているのに、今ばかりは嬉しくて幸せで、不思議とこの先の不安は見えなかった。


明るい曲調に合わせ、ふたりで三拍子のリズムを刻んでいると、楽しい気持ちにもなってくる。

周囲が私たちをどう見ているのかも、気にならなくなっていた。

クルクルと必要以上に回されて、私は笑い声を上げる。

殿下も銀色の髪を揺らしながら、一緒に笑ってくれた。


ああ、なんて楽しい宴なのだろう。

この時間が永遠に続けばいいのに……。


そんな願いが届くわけもなく、ワルツを二曲踊って殿下と手を離した。

一応、踊ったという格好がついたから、「これ以上は踊る必要がない」と言われたのだ。

胸を高鳴らせていたのは、きっと私だけ。

仕方ないよね……。


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