男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
踊りながらフロアを移動していると、窓際にいるバルドン公爵とエリーヌ嬢の姿を視界に捉えた。
公爵は目を吊り上げて怒りを露わにし、エリーヌ嬢は顔を歪めて、悔しそうにこっちを睨んでいた。
その表情は美しさから遠くかけ離れたもので……。
正体を見てしまった気分になる。
謁見の間で見た彼女の、控え目で淑やかな姿は作り物だったということなのか……。
私にも真っ黒なオーラが見えるような気がしていた。
エリーヌ嬢は恐らく、大公妃という身分が欲しいだけなのでは。大公殿下が誰であろうと、構わないのではなかろうか……。
殿下のリードでくるりとターンをさせられると、視界からバルドン父娘の姿が消えて、視線を青い瞳だけに戻した。
さきほどの問いに「嫌です」と正直に答える。
「殿下が、他の女性と踊られるのは嫌です」と。
すると青い瞳が弧を描き、口元には嬉しそうな笑みが広がる。
「ならば、余計なことを気に病むな。このときを楽しみ、俺に夢中になれ」
「はい!」