男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

踊りながらフロアを移動していると、窓際にいるバルドン公爵とエリーヌ嬢の姿を視界に捉えた。

公爵は目を吊り上げて怒りを露わにし、エリーヌ嬢は顔を歪めて、悔しそうにこっちを睨んでいた。

その表情は美しさから遠くかけ離れたもので……。


正体を見てしまった気分になる。

謁見の間で見た彼女の、控え目で淑やかな姿は作り物だったということなのか……。


私にも真っ黒なオーラが見えるような気がしていた。

エリーヌ嬢は恐らく、大公妃という身分が欲しいだけなのでは。大公殿下が誰であろうと、構わないのではなかろうか……。


殿下のリードでくるりとターンをさせられると、視界からバルドン父娘の姿が消えて、視線を青い瞳だけに戻した。

さきほどの問いに「嫌です」と正直に答える。

「殿下が、他の女性と踊られるのは嫌です」と。


すると青い瞳が弧を描き、口元には嬉しそうな笑みが広がる。


「ならば、余計なことを気に病むな。このときを楽しみ、俺に夢中になれ」


「はい!」



< 204 / 355 >

この作品をシェア

pagetop