男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

クロードさんは、いつもの微笑みをたたえて「はい」と頷く。

ポカンとして、なにが起きたのか分からないといった様子の少年の肩を掴み、自分の方に向かせると、しっかりとその目を覗き込んだ。


「これは美しい。まるで黒曜石のようです。
宝石のように美しい瞳が忌まわしいなどと、誰が言い出したのでしょうか」


静まり返っていた謁見の間に、貴族たちのヒソヒソ声が戻ってくる。


「なんともないようだな……」

「一秒目を合わせれば、不運に見舞われ、二秒で病に冒され、五秒目を合わせたら、即死……という話はなんだったんだ?」

「長いこと迷信に踊らされて騒いでいたとは、我々は随分と滑稽ではありませんか」


殿下は立ち上がり、少年の腕を取って彼も立ち上がらせると、その両肩に手を乗せて貴族たちの方へ顔を向けさせた。


「これで皆も分かっただろう。珍しい瞳をしているというだけで、この子は随分と酷い目に合ってきた。なんと哀れなことか。
二度と悪しきものたちに利用されぬよう、この話を都中に広めてほしい。邪視は迷信だということを」


もう少年から顔を背けるものはいなかった。

殿下の言葉にひとりが手を叩くと、周囲の貴族たちも拍手して、邪視騒ぎの終焉を喜んでいた。


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