男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

もしかして……。

あることに気づきかけ、少年を離して恐る恐る振り向くと、絨毯の上に尻餅をついたような格好で座る、殿下を見た。

しまった……。必死だったから、全力の体当たりを殿下に食らわせ、転ばせたんだ。

護衛の騎士が、主を突き飛ばすなんて……。


「も、申し訳ございません!」と大慌てで謝り、そこに土下座をする私。

赤絨毯に額を擦り付け、無礼を働いた理由だけは伝えておこうと、気持ちを口にした。


「殿下にもしものことがあったらと、不安に思ったものですから……」

「なにも起こらないと教えたはずだぞ。
余計な心配をするな」

「し、しかし……」

「もしものことがあるというなら、尚のこと、俺が目を合わせぬわけにいくまい。お前だけを危険に晒す気はないからな」


その言葉にハッとして頭を上げると、殿下は片膝をついた姿勢で、私の斜め後ろをじっと見つめていた。

邪視の少年と目を合わせているのだ。

慌てそうになったが、先に目を合わせた私の身に、なんの異変も起きていないことに気づく。

殿下の言った通り、邪視は迷信だったんだ。
よかった……。


殿下はたっぷりと二十秒ほど視線を合わせてから、やっと視線を外してクロードさんに言う。


「お前も見るか?」

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