男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
歓声に笑いが混ざっているのは、気のせいではない。
ダニエルも「ほっほ」と笑い、目尻にたくさんの皺を寄せた。
「お妃様は随分と跳ねっ返りで、素晴らしく優しいお人のようじゃのう。
さすがは殿下。よいご令嬢を選ばれた」
通り過ぎて行く馬車を見送りながら、ブーケを渡せたことに喜ぶ孫の足をさすり、ダニエルは心に思う。
(いつか、殿下ご夫妻のお子様の服を、アベルが仕立てることになるのかのう……)
遠い未来に想いを馳せて、ダニエルの頬は緩む。
「お妃様、おめでとうございます!」
「大公殿下、お早くお世継ぎを!」
「モンテクレール大公国、万歳!」
ダニエルの視界から馬車は消えてしまったが、肩の上の孫の目は、まだふたりを追っていた。
アベルが無邪気に声を上げる。
「じいちゃん、あのね。
今、大公殿下がお妃様にキスしたよ!」
【完】