男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

昨日ここへ来る途中の馬車から見た街はとても賑やかで、軒を連ねたたくさんの店の、一軒一軒に入ってみたいと思っていた。

ジャコブに案内してもらいながら、楽しく城下街探検をと思って誘ったのだが、厳しい顔の彼に叱られた。


「いけません。昨日ご説明申し上げたことを、もうお忘れですか?
こちらに来てひと月は、この屋敷から出てはいけないというのが規則です。塀の外へ出る許可が下りるのも、それ以降で、前日までに申し出る必要があるんです」


そういえば、就寝前にそんなことを言われたような記憶が……。

青の騎士団の詰所を、すぐには見学できないと言われた理由もそれだった。

ひと月も屋敷外に出てはいけないなんて、そんなつまらない規則を守れるか!と思っていたから、その説明を記憶に留める努力をしなかったけれど。


頬を膨らませて抗議して見せても、ジャコブは真顔で首を横に振るだけ。

腕にかかる私の手をやんわりと外すと、「午餐の用意が整いましたら呼びに参りますので、それまでしっかりお勉強を」と言い残し、彼は部屋を出て行ってしまった。


閉まったドアを見て、私は口を尖らせる。

ジャコブは真面目すぎる。

上から言われたことを忠実に守り実行するのは、使用人として優秀かもしれないが、たまには枠から外れて冒険しないと、つまらない人生で終わってしまうのに。

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