男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
城を出てしまえばすっかり緊張を解いて、景色を楽しみながら、なだらかな坂を下っていく。
南側の正門から出た道ならば、綺麗で立派な店の連なるメインストリートに続いているけれど、この北側の裏門から出た先の景色は随分と違うものだった。
店はあっても簡素な家の前に木箱を並べて、野営のテントのような布を屋根にして、その下で野菜や麦や酒を売っていた。
密集して建ち並ぶ住宅は長屋風で、壁は煤けた、ただの白塗り。装飾の類は見られない。
ひび割れの補修の跡が目立っていて、継ぎ接ぎの雑巾みたいな壁に見える。
歩いている人の服装も南側に比べると、かなり質が落ち、せっかく平民風の服装に着替えてきたはずの私が、ここではやはり貴族的に見えてしまう気がした。
都ならば全ての民が裕福で、貴族とそれほど変わらぬ生活を送っていそうだと思っていたけれど、そうではないみたい。
大きな街なら尚のこと、貧富の差が生まれるものなのかもしれないね……。
初めは南側のメインストリート沿いにある立派な店を、一軒一軒、覗いて回るつもりでいたのに、気づけば庶民の生活振りに興味を持って散策していた。
長屋の前にロッキングチェアを置いて、日向ぼっこしながら、うつらうつらしている老人に、井戸端で芋を洗う若い女性。
よく見ると芋を洗いながら、赤ん坊に乳を与えていて、その器用さに驚かされた。