男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
家の中からソーセージを咥えた猫が走り出てきたと思ったら、箒を持った中年の婦人が「コラーッ!」と叫んで追いかけている。
ゆっくりと荷車を引いてミルクを売り歩く男に、かくれんぼをして遊んでいる小さな男の子たち。
家は簡素で古めかしく衣服は質素で汚れていても、子供たちは福々と丸く、なんだか平和でみんな幸せそう。
北側に住む平民たちは南に比べて貧しくても、特に不満を感じていないのではないだろうか。
それはとても大切なことだ。
領民の生活を安定させることは、領主の重要な仕事のひとつ。
民を見れば主の政治能力が分かると言っても過言ではなく、そうすると大公殿下は民を幸せにできる優れたお方だということになるのだろう。
そんなことを考えながら土の道を歩いていると、かくれんぼの鬼役の少年が「エディ、見ーっけ!」と大きな声を出すから、そっちの方に振り向いた。
気づかず行き過ぎようとしていたが、細い路地のような横道があり、蛇行しながら奥へと続いているようだった。
その路地から、かくれんぼの友達が、可愛い笑顔で出て来る。