男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
壁際に追い詰められとき、私の右足がなにか固いものに触れた。
それはゴミとして転がっている火かき棒。
火かき棒とは暖炉やかまどの灰を掻き出す鉄の棒で、先が曲がってしまったために捨てられたようだ。
使える……と思った私は、ブーツの爪先を引っ掛けて蹴り上げ、右手でキャッチすると、それを男に突きつけた。
男は反射的に飛び退いたが、怯んではいない様子。
「おっと、危ねぇ。可愛い顔した坊ちゃんが、この俺と戦おうっていうのかい?」
男の腰には、使い込まれたような鈍色の片手剣の鞘が下げられていた。
ニヤリと笑ったと思ったら、一気に引き抜き、私の火かき棒に強く交えてきた。
金属のぶつかる高い音が、壁に囲われた空き地に反響する。
二度三度と剣をぶつけてから、お互いに下がって間合いを取ると、男は高笑いした。
「こりゃ驚いた。大した腕前だ」そう言って私を褒めてから、ドアの方へ声を張り上げた。
「野郎ども、獲物だぞ!
さっさと起きて出てこい!」
家の中に仲間がいるの!?
マズイと思った直後に、ドアから男が三人も出てきた。
皆、薄汚い身なりをして、髭面の悪人顔。
四対一で、しかも私の剣はただの火かき棒とあれば、勝負にならないのは目に見えていた。