男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
騎士を押しのけるようにして前に出た私が「覚悟しなさい!」と、火かき棒を鼻先に突きつけると、男は観念したように剣を落として、地面に両膝をついた。
そこにバリトンボイスの響きのよい声が、路地のほうから聞こえてきた。
「覚悟するのは、ステファン、お前もだ。
まったく……跳ねっ返りの問題児め」
一瞬、悪党の仲間が現れたのかと思ったが、薄暗い路地から光の差すこの空き地に現れたのは、濃紺のマントを羽織り、銀色の髪と青い瞳を持つ美しい青年……そう、大公殿下だった。
その後ろには困ったように微笑む、クロードさんの品のよい顔も見える。
四対一で悪人と対峙したときと同じくらい、マズイと焦っていた。
どうして大公殿下がこのような場所に……?
いや、そんなことより、規則を破って城を抜け出したのがバレてしまった。
どうしよう。どんな厳しいお咎めがあることか……。
さっきまでの威勢はどこへやら。
手から火かき棒が滑り落ち、私は項垂れて「申し訳ありません」と力なく呟いた。
ジャコブの言うことを聞いて、大人しく自習していればよかったと後悔していたら、急に殿下の腕が伸びてきて、肩を押されて突き飛ばされた。