男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

騎士を押しのけるようにして前に出た私が「覚悟しなさい!」と、火かき棒を鼻先に突きつけると、男は観念したように剣を落として、地面に両膝をついた。

そこにバリトンボイスの響きのよい声が、路地のほうから聞こえてきた。


「覚悟するのは、ステファン、お前もだ。
まったく……跳ねっ返りの問題児め」


一瞬、悪党の仲間が現れたのかと思ったが、薄暗い路地から光の差すこの空き地に現れたのは、濃紺のマントを羽織り、銀色の髪と青い瞳を持つ美しい青年……そう、大公殿下だった。

その後ろには困ったように微笑む、クロードさんの品のよい顔も見える。


四対一で悪人と対峙したときと同じくらい、マズイと焦っていた。

どうして大公殿下がこのような場所に……?

いや、そんなことより、規則を破って城を抜け出したのがバレてしまった。

どうしよう。どんな厳しいお咎めがあることか……。


さっきまでの威勢はどこへやら。

手から火かき棒が滑り落ち、私は項垂れて「申し訳ありません」と力なく呟いた。

ジャコブの言うことを聞いて、大人しく自習していればよかったと後悔していたら、急に殿下の腕が伸びてきて、肩を押されて突き飛ばされた。

< 50 / 355 >

この作品をシェア

pagetop