『コーン』な上司と恋なんて
「芦原さん」


「何でしょうか?」


不意に後ろから声をかけられ返事をした。
振り向くのも嫌だからそのまま歩き続けていると……


「今日クリスマスなのに予定ナシだったのか?」


後ろからされる質問に(そんなこと聞くの?)と思いながら答える。


「なーんも無いですよ。私にはクリスマスどころかイブも一緒に過ごす人もいませんでした」


それも今年限りにするんだ…と誓う為に遠出して来た。
愛車のcocoaを飛ばしてこんな田舎の町まで。


「寂しいなぁ〜」

「余計なお世話です」


つい言い返してしまった。
マズッ…と思い振り返ると、3段くらい下にいる課長が微笑む。


こうして見ると意外にイケメンだったりする。
切れ長の眼差しといい筋の通った鼻と言い、皆が噂を口にしたがる理由も分かる。


「課長こそワンコとお出かけですか?こんな遠い所までドライブ?」


大きいイヌを飼えるような所に住んでるんだ。いいなぁ…と思いながら尋ねた。


「いや、ドライブじゃない。実家が近くなだけだ」

「…あ、そうなんですか。じゃあお散歩ですね」


私の声に「うん、まぁ」と歯切れの悪い返事があった。
少しだけ胸に引っ掛かったけど、あまり気にもしないで聞き流す。


「ハァ…ハァ…ハァ…」と、後ろから聞こえる息使いが苦しそうだと思って振り返った。


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