『コーン』な上司と恋なんて
老犬だと言われたワンコを見ると、首を項垂れながら歩いてる。

本当に老犬なのかもしれない。そう言われてみれば、何となく年寄りっぽい気がする。



「そのワンコは課長の実家で飼ってるんですか?年齢は何歳くらい?」


ワンコから目を離して前を向いたまま聞く。
課長の話を鵜呑みにする訳じゃないけど、何となく気になってきた。


「犬年齢で言ったら8歳。人間で言うと還暦くらいかな」

「それで老犬なんですか?」

「ああ。大型犬は老いるのが早いんだ」

「へぇー…」


どうやらイヌに関しては事実を言ってるようにも聞こえる。

前を歩く私の足取りも遅くて重いけど、課長の連れてるワンコは呼吸も乱れて苦しそうな気がする。



「ジョン、少し休もうか」


課長の声がして足音が止まった。
ワンコの爪がセメントに当たる音と課長の靴音が同時にストップする。

心配になって振り返ると、課長はしゃがみ込んでワンコの頭を撫でていた。


「大丈夫か。もう少しで上に着くからな」


心配そうに見つめる課長に鼻先を擦り寄らせ、ワンコは口呼吸を繰り返す。
ハァハァ…と早い呼吸で、課長が心配するのもわかるくらいの激しさで。


「大丈夫ですか?」


思わずこっちの足も止まってしまった。それに反応するように課長の視線が上を向く。


「芦原さんは気にせず先に上がっていいよ。こっちは年寄りと一緒みたいなもんだからのんびり行く」


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