契約彼女にした理由
ランチの帰り道、私は携帯を見つめて大きく深呼吸をした。


数回のコールで繋がった。



「葉月?」


「学?噂で聞いたけど日本にいるの?」


「…………ああ。」


「そう、わかった。」


「はづ………。」



学との携帯を切った。


学の気持ちが聞かなくても分かったから。



「………嘘つき。」



私は俯くと目を閉じて立ち尽くしていた。



『葉月、ずっと一緒にいたい。』


『葉月、愛してる。』



学の言葉が全部嘘に聞こえてきた。


ポタリと落ちていく涙がアスファルトに染みを作っていく。



「葉月?」



誠の声にも顔を上げられないでいた。



「心から愛する人なんて存在しないのね。」


「葉月………。」



誠の辛そうな声に現実なんだと感じる。加速する涙が止まらない。


突然、誠に抱き締められた。



「声を殺して泣くな。俺の前では泣けよ。」



誠の言葉に私の腕は自然と誠の腰を掴んだ。溢れる涙を気にする事なく私は泣いた。
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