契約彼女にした理由
再び光だした携帯をじっと見つめた。


大きく深呼吸をすると携帯の通話ボタンを押した。



「もしもし。」


「葉月?」


「学?何か用事?」



私の口からは思ったより低い声が吐き出されていた。


学に少しの沈黙が流れたが…………。



「葉月、話したい事がある。まだ会社か?」


「そうよ。」


「ラウンジで待ってる。」


「遅くなるわ、きっと。」


「待ってる。仕事が片付いたら来いよ。」



いつになく優しい言い方の学に目頭が熱くなる。



『こんな時に優しい言い方をするのは狡い。』



心の中で呟き、唇をグッと噛み締める。今にも涙が溢れそうなのを堪える。



「葉月、待ってる。ちゃんと来いよ。」


「………わかった。」



私は静かに携帯を切った。


噛み締める唇にグッと力を籠めた。



「………今更………優しくしないで。」



私は切れた携帯をじっと見つめていた。
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