目を閉じてください
「―――さんですね??いつから来られますか??」
「きすなんてしてません!!」
「はい??」
はっ、と我に返った私。
そうだ。
面談で[DENTAL CLINIC Office KAYANO](デンタルクリニック オフィス カヤノ)に来ていたのだ。
応接室で、一応面談をされていた。
詰襟風のブラウスと濃紺のタイトスカート姿で白衣を羽織った30代半ばの女性が、眼鏡を直してオホンと咳払いする。
後から部屋に入った、50手前と思われる男性が恐らくご主人で医師兼、経営者の栢野氏だろう。
白髪混じりの口髭と髪さえお洒落に見える、ダンディーなご主人。手梳でざっくりと後ろで束ねた髪、はっきりとした目鼻立ちの奥様。
2人とも美男美女だ。夜景にバーのカウンターが似合いそうな。
臨時で社員の代わりとはいえ、どこの馬の骨を雇うほど、緩い会社でも、ブランドビルでもないということだ。
遅刻に関しては、平謝りに謝った。土下座し掛けたけれどさすがに止められた。