目を閉じてください


「シンちゃん、助けてよ。行く前からこんなの疲れるよ」


自分の部屋で、名前を付けた人体骨格模型に話しかける。
いわゆるガイコツというやつだ。


名前の意味はとくにない。
ジンタイのジンにしようかと思ったけれど、濁点の響きがよくなかった。


あえて言うなら、姉のお気に入りのアイドルに因んで、とでもいうところか。


他人には、いや、家族にすら見せられない光景なのは一応自覚している。


いいじゃないですか。
世の中、縫いぐるみが手放せない大人だっているんだし。


「あああ~行きたいような行きたくないような」


言ってパジャマ姿でベッドでゴロゴロしながらも、ふと真部さんの顔が脳裏に浮かぶ。


「恋する乙女じゃあるまいし。ああ~もう嫌だ」


―――けれど。
嫌が応でも朝は来る。



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