不審メールが繋げた想い

ブー、ブー、ブー…。
…ん、…ん、起きる時間かな…。

【ごめん起きてる?それとも起こしたかな。起きたら家に誰も居なくてびっくりするかも知れないけど、今、俺は母さんと病院に居る】

え?え?飛び起きた。寝起きの格好など気にせず下に駆け降りた。病院…?…嘘…。

「真さん?…真さん?」

…居ない。どこにも…誰も居ない。
あ、また、メール。

【心配する程の事では無いから気にしないで欲しい。申し訳無いのだけれど、帰り、見送りに行けなくなってしまった。時間通り各務が迎えに行くから、詩織さんは予定通り帰っていいからね。心配しなくていいと言っても気になるだろうけど、本当に大丈夫だから。心配要らない。家の鍵とか全て大丈夫なように各務に任せてあるから。こんな状況になって本当に申し訳無い。また連絡するから】

あ、…真さん……あ、どうしよう。ヘナヘナと座り込んだ。はぁぁ、私…、全然気がつきもせず、寝入っていたんだ。…なんて事。…病気だって知ってるのに。気を抜いていた。お母さん大丈夫なんだろうか。少しくらいバタバタした音がしただろうに。…はぁ。…もう。呑気過ぎ…。大丈夫って言っても、大丈夫なんだろうか。やはり、私が来るって事で無理をしてしまったんだ。疲れが出た…間違いない。結局私はこうして何も出来ないで居るなんて…。

無意識だと思う。リビング中に視線を巡らせていた。知らない家で一人で居るのも…。とにかく私は帰らないといけない訳だから…。勝手に予定を崩しては却って迷惑を掛けてしまう事になる。…各務さんが来てくれる。着替えて準備はしておかないと。朝ご飯…三人で一緒に出来なかった。何てメールを返しておいたらいいのか解らないけど。

【真さんの指示通りに行動します。帰ります。お母さん、大丈夫でしょうか。私が来る事で無理をされたんですね。何も気がつかず呑気ですみません】

はぁ、もっと早く起きていたら良かった。悔やんでみても時間は戻らない…。

二階に戻りベッドを整え、着替えて荷物を手に下りた。
…あ。

『大丈夫だから何も気にせず食べて。適当に温めて』

走り書きがテーブルの上に置いてあった。さっきは全然気がつかなかった。……朝ご飯…もう準備は出来ていたんだ。…こういう時は、きちんと食べた方がいいよね。気を遣って食べないで残して帰った方が失礼な気がする。こんな時なのに…益々呑気だと思われるかも知れないけど。
和食が用意されていた。お味噌汁を温めてご飯を装った。お母さんが早く起きて用意してくれた物か、真さんが起きた頃に作ってくれた物なのか解らないけど。
…いただきます。
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