不審メールが繋げた想い
そうだ、各務さんに聞けば詳しい事が解るかも知れない。
朝ご飯の後片付けを済ませ、メールをしてみた。真さんが教えてくれていたもう一つのアドレス。これは各務さんの物だって言っていた。
【おはようございます。真さんのお母さんの容態、何か伺っていますか?私が寝ている時、具合が悪くなったようで病院に行っています。どんな状態でも、私には心配させないようにだと思います、大丈夫としか連絡がありませんでした。詩織】
はぁ、アドレス、各務さんの物で間違いないと願います。
ブー。来た。
【まだお帰りになる時間には早いですが、そちらにもう向かっています。話はその時に。各務】
あ、各務さんだ、良かった…アドレスが各務さんの物で。こっちに来てくれるのね。はぁ、何だかほっとした…。やっぱり人様のお家だから、見ず知らずの私が一人で居るなんて…。不安で落ち着かないもの…。
ピンポン。各務さんかな。
あ、各務さんだ。早い。もう来てくれた。
「はい、直ぐ開けます」
玄関に向かった。
「おはようございます、詩織さん」
「…各務さん。はぁ良かった…有難うございます。あ、おはようございます。入って貰っていいですか?私の家ではありませんが」
「失礼します。丁度、出ようと車に乗っていたところでした」
え?
「私も人の家という事になりますが。知らない人間が留守を預かっているのも妙なものですね」
「ええ…はい、そうなんです。こんなに早い時間からごめんなさい。来てもらえてほっとしてます」
ソファーに腰掛けて貰い、一応、珈琲などお出しした。
「…有難うございます。何でしょう…、私は、一、マネージャーですので、こんなにゆっくり腰掛けるなんてした事はないんですが、凄く変ですね」
「そうなんですね」
「はい。余程の事がない限り、私は玄関先迄ですから」
そうなんだ。
「あの、お母さんの具合はどうなんでしょうか…聞かれてますか?」
「んー、まあ、私も詳しくはまだ聞いていないのですが、今日は心配するような状態ではないのだと思います。だからそれ程心配されなくても大丈夫だと思います」
「病気というのは…」
静かに珈琲カップを置いた。手を合わせるようにして指を組んだ。
「…完治とか、そういった事は、もう…。本人も希望していて、痛みがないように過ごせればそれでいいと。後は自然に…という事らしいです。手術ができない訳ではないようなんですが、年齢的な事を考慮すると、それはもう望まないと…」
「真さんは…あまり長くないんだって、言ってたのですが、…あの、そんなに進行している状態なんでしょうか」
…あ、関係のない私が…あまり立ち入ったことを聞くことは駄目かもしれない。
「痛みがなかったらしくて、解った時は、もう…」
「…そうなんですね」
「お母さん本人は、寿命よって、あっけらかんとしているようですが」
「昨日、とてもお元気そうでした…」
でも、無理をさせていたんだ。