不審メールが繋げた想い

「詩織さん?どうでしょう、お昼前に出ませんか?」

「え?」

「こういう状態になってしまいました。デリバリーを頼んだとしても、ここでお昼ご飯というのも、落ち着かないでしょ」

あ、そうだ、何か…、そうだ。

「お昼をどこかで食べて、それから送ります」

「あ、はい。あの、各務さんは大丈夫なのですか?予定とか…」

当初の時間より随分前倒しで来てくれたことになるから。

「ご心配なく。用があれば来ていませんよ。ついでにという訳ではないですが、お店など見て回りませんか?ショッピングはお好きですか?色々と、見るだけでも良くないですか?私とが嫌でなければですが…」

慌てて手をパタパタと振った。

「あ、嫌だなんてとんでもない。…有難うございます、気を遣って頂いて。こんな田舎者に光栄です。きっとウロウロキョロキョロして、落ち着かないですよ?」

「いいえ大丈夫です。では…、早速、行きましょう」

「え?もうですか?」

「はい、落ち着かないでしょ?ここに居ても。何だか…、広くて綺麗過ぎて。私が落ち着かなくて、座って居られないんですよ」

…本当、気を遣ってくれているんだ。
いいですよ、と言ってカップは各務さんが片付けてくれた。その間に私は帰る支度、荷物の確認を改めてした。


「忘れ物はないですか?」

「はい、大丈夫です」

鞄は各務さんが持ってくれ、家を出た。
居づらくても、離れるには妙に後ろ髪を引かれた。振り返って家を仰いだ。真さんに会わずに帰る。お母さんの容態も気になる。
もう、この家に来る事はない…のかな。

「詩織さん?」

鍵をかけた各務さんに不意に顔を覗き込まれた。

「あ、はい、ごめんなさい、何だかぼんやりしてしまって」

「大丈夫、大丈夫ですよ。またYの方から連絡があると思いますから」

「…はい」

「行きましょうか」

「はい」



「どうして私だったんでしょうか。…こんな事。私じゃなくても…」

理由は説明された。だけどまだ……やっぱり腑に落ちない。

「…私からは、何とも」

車で移動していた。 知らないという事なのか、知っていても自分からは言えないという事なのか。

「説明はされました…でも、突然のことでもあったし、そうでなくてもとにかく何もかもが腑に落ちなくて…」

好きだと言われてもだ。そんな事…それこそ理解できない。出来るはずがない

「いきなりの事ではありましたからね」

「いきなりも何も、有り得ないです、こんな事」

何もかも、全てがあり得ない。

「まあ、ファンの方と、こんな事はあまり…というか、いい事ではありませんから」

「そうですよね。何か、まだ、理由を聞かされても、納得出来なくて…。だってですよ?振りなら何も私でなくていいと思うんです。余計な費用だってかかるのに…。言ったんですよ?私じゃなくてもどんな人だって、真さんなら頼む人、居るじゃないですか」

「…そうですね…」

振り…はぁ。真は…全く…。詩織さん、すみません。私からは勝手に言わない方がいいと思いますので。
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