不審メールが繋げた想い

お昼ご飯は早々に済ませ、お店を見て回る事にした。お店は沢山ある。雑貨屋さんに入ってみたり、アクセサリー、洋服と、久し振りに誰かと…男の人とゆっくりショッピングをした。
…各務さんて。

「あの…聞いてもいいですか?」

「はい、何でしょう?」

これも可愛いですねと、ピアスを見ていた各務さんが返事を返してきた。

「各務さんは彼女さんは居ないのですか?」

一瞬、見ていた手が止まった。

「私は…居ませんよ」

…。あっ。…女の人には興味は無い、って、…確か、真さんが言っていたような。失敗した、うっかりしていた。聞くなら恋人はって聞けば良かったかな。でも…私は知らなかった事でいいはずだ。このまま何事もなく話を続けた方が自然よね。

「そ、そうなんですね。各務さん、優しいし素敵だから、モテるだろうなって思って聞いちゃいました…すみません」

「いや、別に構いません。居ないのは事実です」

折角、楽しくしていたのに…。ごめんなさい。

「動物とか、飼われてます?」

「え?あ、いいえ。飼えないマンションですし、好きですけど、実家暮らしのようには飼えないですよね。ペット可のマンションだとしても、一人にさせるのは可哀相な気がしますし」

「なるほど」

結局、見て触って何も買わずじまい。各務さんはちょっと失礼してと、お店を出る時に何か購入したようだった。

「お待たせしました。詩織さん、富士山は見た事ありますか?」

「え?富士山?本物って事ですよね?」

「はい、勿論」

「それは無いです。…出無精なので遠出もしなくて…テレビを通してだけです」

「では、見ませんか?」

「え?」

「本物の富士山。幸い今日は天気がいい…、綺麗に見られると思いますよ?どうですか?」

「え?」

富士山に行くの?今から?

「さて、善は急げと申します。行きますよ?」

え?!行くの?本当に?
駐車場に戻ると各務さんは車を出した。
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