不審メールが繋げた想い

ピンポン。ピンポン。わっ!心臓が跳ねた。…びっくりした…。
……は、い?…こんな時間に、誰…。

ピンポンピンポン…。うわっ!誰よ?
…今日みたいな日に、余計恐い。夜中に用があるなんて思えない。…恐い。開けられない。

RRRRR…。
っ。はぁ…びっくりした…も゙う。心臓が飛び出すかと思った…。あっちもこっちも…怪奇現象?…。このタイミングで電話なんて。
…あ!拾ってくれた人かも知れない。ドタドタと走った。

ディスプレイには携帯の番号が表示されていた。勿論知らない。…でも。恐る恐る出てみた。

「…は、い」

名前は敢えて言わない。

「詩織さん?詩織さんですね?各務です」

「あ、各務さん…、はぁ」

「携帯、忘れてますよね?」

「あ、はい、はい!失くしましたぁ」

あぁはぁ…あったんだ。各務さんの車の中にあったんだ。そうなんだ…良かったぁ…。あ、取り敢えず、迷惑は掛けてしまうけど着払いで送って貰おう。はぁ、良かった。

「各務さん、それ…」

「お持ちしました」

「……え」

「お渡ししたらすぐ帰ります。開けて頂いてよろしいですか?」

「ぇえっ?」

「今、お部屋の前に居ます」

「え゙っ?!」

あのピンポン?
ガシャーンッ。玄関の方に思いっ切り振り返って受話器を引っ張ったせいでズズーッと電話機本体が落ちてしまった。

「あ、何です?!今の音!大丈夫ですか?詩織さん?詩織さん?」

プー…。詩織さ、ん?

「詩織さん…、詩織さん?」

…。

ピンポンピンポンピンポン…。

「詩織さん!詩織さん!大丈夫なんですか?詩織さん!開けてください、詩織さん!」

ドンドン、ドンドン。
…カ、チャ。

「あっ、詩織さん。今、大きな音が…」

「…すみません、電話…、落としてしまって…」

あ、そのストール…。あぁ、電話、落ちてるな。

「はぁ…心配しました。大きな音だったので」

カ、チャ。

「あのぉ…何かありました?」

お隣りさんがノソッと寝癖のついた頭で顔を半分だけ出した。きっと今の音で目が覚めたんだ。
玄関で鳴るしつこいチャイム。なんとなくこの辺りから煩く思っていたところへ、物が落ちる大きな音。挙げ句、男の大きな声。連打するチャイムの音。ドアをドンドン叩く音。
夜中に尋常じゃない。日頃関わりを持ちたくないと思っていてもただならぬ何かがあったと思っちゃうよね。

「あ、何でもないです。大丈夫です、お騒がせしました。ごめんなさい、おやすみなさい」

「あ…、はい、では、…おやすみなさい……は、ふ…」

絶対、修羅場か何かだと思ってる。言葉では納得していたが明らかに怪訝な顔をしていた。顔を引っ込めドアを閉めた。
無意識だ。各務さんの背中に腕を回して引き寄せ、玄関に入れていた。
パタ、ン、カ、チャ。

「はぁ…、何だか、もう本当に…、私、すみません。何もかもそそっかしくて…」

「…詩織さん?」

「…えー。あ、か、各務さん?」
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