不審メールが繋げた想い

「詩織先輩、最近メールどうですか〜?まだ来てます?」

あ、そう言えば、ユミちゃんに相談したままだった。

「ごめん、有難う。実は解決したのよね」

「え、解決?原因が解ったんですか?」

「そ、そう、そうなのよね。送って来ていた人が解ったのよね」

「へぇ…、良かったですね。じゃあ、もう悩まされる事は無くなったんだぁ」

悩まされる事か…それはまた別なのよね。

「え?」

「え?あ、ううん、なんでも無い。そうだ、これあげる」

うっかり呟いちゃったかな。誤魔化すように持って来ていたサツマイモのスイーツを渡した。

「あー、有難うございます。美味しそうですね。あれ?先輩…、サービスエリアとか行ったんですね。ドライブにしては…随分遠くまで行きましたね?それとも誰かのお土産のお裾分けですか?」

私が出不精だということは知っている。…その顔は何か探ってる?気のせいか何だか渡す手元を見られたような気が…。

「え?あ、それはね、富士山を見に行ったのよ」

「へえ、富士山を見に?わざわざ?いきなりこんな遠くまで?急に山が見たくなるなんて。…先輩、もしかして、現実逃避じゃないですか?…。ひょっとして、メール以外に何か病んでます?ブルーになってるとか…、大丈夫ですか?」

ブルー?病んでる訳では…無い。悩んではいる。

「大丈夫大丈夫。そんなんじゃ無いから。たまたまよ、たまたま。連れて行ってくれる人が居たから行ったの。話してるうちに実物の富士山を見た事ないって話になって」

「え〜、それって、遠回しにそういう人居るんですけどアピールですか?即、行動するなんてなんだか上手くはまる言葉で言えないけど、行動力のある人なんですね~」

…違うんだって。

「知り合いよ、知り合い」

そうよ、お世話になってるだけよ。迷惑かけっぱなしの人なのよ。

「あー、今その人の事、考えましたよね?顔、浮かべたでしょ〜」

…そりゃあ話題にすれば考えるでしょうよ。

「何か良からぬ想像してるようだけど、違うから。本当に、ただの知り合いなの」

「へえ〜?まあ別にいいです。これ、頂きますね。でもぉ…、そのキラキラした綺麗な指輪。してると私よりもっと目敏い社員に突っ込まれますよ?」

「えっ?」

あ゙…、だっ、忘れてた…。まずいよこれは。慌てて抜いてゴトゴトとロッカーにしまった。…なんて事。ボーッとしてる証拠ね。この子は割とこんな事、言い広める子じゃない。見つかったのがこの子で助かったと言えば助かった。

「ハハ、大丈夫で~す。そんなに慌てなくても~。自分で買ったなんて誰にも言いませんから。でも、そのクリアな輝きだと相当お高い物ですよね、ね?先輩だから買えちゃうけど、私なら絶対無理な領域ですよ、それ」

あ゙っ、そう取ってくれたのね…まあ、この際それでいいか。

「…ハハ。内緒よ?お願いね、恥ずかしいから」

何をどこまで想像して言ってるのか…。

「は〜い、勿論で〜す」

…、はぁ。まあ、誰が見てもこれは…こんな立て爪のなんて、普段使いの指輪ではないものね…。
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