暁月夜
いくら小さな箱といっても死角は存在するわけで。一人輪を乱す行動をしていてもここなら彼の視界にうつることはない。
そして彼の視界にうつることなくそっとライブハウスを後にする。
私はこのライブハウスに通い始めてから、最後まで couragitのステージを見届けたことがない。
いつもラストの曲に入る前のMCを挟むタイミングでこの場を後にするから。たとえ次の機会に彼を見ることができたとしても、彼の口から"終わる"という言葉を耳にしたくなかった。
だから私は、必ず最後に歌われる一曲を実際に聞いたことがなかった。
一週間に一度のこの時間はあっという間に過ぎ去っていく。