暁月夜
このあとはいつものように歩いて帰路につくだけで予定は入っていない。
そもそも質問をしておきながら逃がすつもりがないことが、腕を掴んだまま離さない手が雄弁に物語っていた。
「かまいません」
そういって連れてこられたのは関係者以外立ち入り禁止の張り紙が張られたその先にある廊下の隅だった。
どうやらステージ裏に位置するらしいここには音が漏れ聞こえ、 はっきりとは伝わらない音が止むことで 今夜のライブが終わりを告げたことを知らせてくる。
その場にある椅子に座っていると、廊下に面する扉から一人の男性が出てきて私をその視界にとらえた。