夢幻の騎士と片翼の王女

奇妙な夢（side リュシアン）

＊



「あーーーっ！」



俺は、自分で発した声で目を覚ました。
心臓が酷く飛び跳ね、俺は汗びっしょりになっていた。



とても生々しい夢だった。
俺は見知らぬ男に刺され、剣を引き抜かれた瞬間に、全身が噴出した我が血で染まった。
刺された痛み、気分が悪くて寒気がして…
俺は死ぬのだと悟った。
だが、最後の力を振り絞り、俺は見知らぬ男を一撃の剣にて仕留めた。



俺の傍には王女と思しき若い女性がいて、狂ったように泣き叫んでいた。
俺は、その女を見たら、なんだかとても安心して…



（おかしな夢を見たものだ…）



汗を拭い、水差しの水を喉に流し込んだ。
喉が潤うとまた汗が噴き出した。
俺はゆっくりと立ち上がり、大きな窓を開いた。
そよぐ風が、優しく頬を撫でてくれた。



窓の外はまだ薄暗い。
起きるには、まだ少し早い時間のようだ。
視線を上向けると、幽閉の塔が目に映った。



（亜里沙……）



不思議な女だった。
異国の者だというだけではなく、彼女はどこか変わっている。
普通の女とは違った、魅力のような…それも格別に強力なものを感じる。



しかし、彼女はアドルフの側室になることが決まった。
残念だが、もう俺にはどうすることも出来ない。
そう思うのに、俺はまだ諦めきれないでいた。
なぜだろう？飛び抜けて美しいわけでもなければ、ただ異国の者だというだけの者なのに…
本当に不思議な女だ。
なぜだか酷く惹きつけられてしまう。
それは俺に限ったことではない。
アドルフだってあんなに女に関心を示したことなど一度もなかったのに。



（なぜなんだ…？）



俺は幽閉の塔を見上げながら、心の中で亜里沙に問いかけた。