夢幻の騎士と片翼の王女




「強情な女だな!いい加減に白状したらどうなんだ!」

「私は、浮気なんて絶対にしてません!」



家では毎日同じような喧嘩が繰り返されていた。
父は鬼のような形相をして、母を執拗に殴ったり蹴ったりした。
使用人達も誰も母のことを助けてはくれない。
まだ幼かった私にも、何も出来なかった。
大きな物音や母の泣き叫ぶ声に怯えながら、ただクローゼットに隠れて震えていることしか出来なかった。



そんな日々が何年か続き…そのうち、母が私に冷たくあたるようになった。



「あんたがそんな力を持ってるから…
だから、私がこんな目に遭うんだ!
全部、あんたのせいなんだよっ!」



それは、母に暴力をふるう時の父と同じ目だった。
激しい憎しみと憤りに燃え盛る瞳だ。



幼い私には、なぜ優しかった両親がこんな風になってしまったのか、その原因はわからなかった。
ただ、私が何かをしてしまったから、こんなことになったのだと…
私のせいなんだということだけは、漠然とわかっていた。
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