夢幻の騎士と片翼の王女
だけど、扉は開かなかった。
そうだ…この部屋には外に鍵が付いてるんだ。
でも、今はチャンスの時…
私は、扉を叩いて、声を上げた。



「リュシアン様!
お願いしたいことがあります!」

「亜里沙様、お控え下さい!
許可を得てここに来られた方以外とは、お話になってはいけません!」

「リュシアン様!」

また涙が込み上げて来た。
幽閉の塔に閉じ込められ、その塔の中でもまた閉じ込められて、言いたいことも言えないなんて…



「リュシアン様、助けて下さい!
こんなところにいるのはもういやです!
お願いです!リュシアン様!」

「どういうことだ、亜里沙!」

「リュシアン様!」


かちゃりと鍵の外れる音がして、急にアンナさんが部屋に入って来たと思ったら、私は、口元を布で押さえられた。
その布には何か独特のにおいのするものが染み込ませてあって、私はすぐに意識を失った……

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