夢幻の騎士と片翼の王女




「アドルフ様、私……」

「わかっている。子が出来たのだな。
でかした。」

私は、ジゼルの差し出した両手をあえて見ないふりをして顔を背けた。



「あ、アドルフ様…」

「体を大切にするのだぞ。」

ジゼルの顔を見ることもなくそう答え、私はその場から離れた。



今夜から、あの女を抱かずに済むのかと思ったら、とても爽快な気分だった。
それだけではない。
ついに今夜、アリシアに会えるのだ。
約半年前は、話さえする暇がなかった。



(今夜は、何を話そう…?)



そんなことを考えるだけで、私の心は薔薇色に染まった。
恥ずかしいが、今の私はまさに初恋をした少年のような気持ちだ。
アリシアは私のことをどう思うだろう?
気に入ってくれるだろうか?
何か持って行った方が良いだろうか?
持って行くとしたら、一体、何を?



本当に自分でも照れ臭くなる程、浮かれている。



(幸せだ…幸せ過ぎて、どうにかなってしまいそうだ…!)



押さえそうとしても自然に笑みがこぼれる。
そんな自分が、自分でも信じられない想いだった。
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