夢幻の騎士と片翼の王女




(……大丈夫だな?どこもおかしいところはないな?)



鏡の前で、私は何度も自分の姿を確かめた。



(何をやってるんだ、私は…)



愚かしい真似をしている自分自身に苦笑した。



真っ白なブラウスに、糊の効いたスラックス…
湯浴みを済ませ、長い髪はいつもよりずっと念入りに梳かした。



ジゼルには、子に何事かあってはいけないからと、今夜から寝室を別にすることを申し渡した。
不服そうにはしていたが、そんなことは知ったことじゃない。



アリシアには、今夜は季節の花束を持って行くことにした。
宝石も考えたのだが、急なことで間に合わなかったのだ。
夕食が済んでからはとにかく早くアリシアに会いたくて、部屋にいてもなかなか落ち着くことが出来なかった。



ふと柱の時計を見上げると、0時5分前だった。



(……そろそろ行くか。)



私は花束を抱えた。
香しき花の香りが鼻をくすぐる。



(亜里沙は喜んでくれるだろうか?)



そんなことを考えては、私はまた自然と微笑んでしまっていた。
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