夢幻の騎士と片翼の王女
大きなあくびが出て、ふと時計を見上げると、もう0時を少し回ってた。
いつもなら、もう横になってる時間だもの。
眠いのも当たり前。
でも、まだ何も起こらない。



「メアリーさん、いつまで待てば良いんですか?
一体、何があるって言うんです?」

「それは…」

メアリーさんが口を開きかけた時、扉を叩く音がした。
こんな時間に一体誰が……?
メアリーさんとアンナさんは、二人して部屋の外へ出て行った。



(誰なんだろう?)



話し声がしたと思ったら、部屋の扉が開いて…



(え……?)



部屋に入って来られたのは、つやつやの長い髪をなびかせた……



「ア、アドルフ様!」



一度しかお会いしたことはなかったけれど、はっきりと思いだした。
それはまぎれもなくあのアドルフ様だった。



「アリシア……」



え?今、アリシアって呼ばれた?
訂正した方が良いのかな?それとも私の聞き違い?
どうしようかと迷ったけれど、アドルフ様の真っすぐな視線に、私は圧倒されて何も言えなくなった。



「アリシア…ここでの暮らしはどうだ?
不自由はないか?」

「え…えっと……
は、はい。皆さん、良くして下さってます。」

「そうか…長い間こんなところに閉じ込めて済まなかった。
あと半月ほど待ってくれ。
それまで、毎日会いに来るから。」

「ま、毎日ですか?」

「……いや…なのか?」

「い、いえ、そんな……」



毎日来られるってことは…



(も、もしかして…ついにアドルフ様に御悦びを与えなくてはならないってこと…?)



急に顔が火照って来るのを感じた。
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