夢幻の騎士と片翼の王女
「失礼します。」

メアリーさんが、お茶を運んで来てくれた。
テーブルの上に、私とアドルフ様のお茶が置かれて、私の向かいにアドルフ様が座られて…



「アリシア…さぁ、飲みなさい。」

「は、はい。」

さっきのとはまた違った香りのお茶だ。
ただお茶を飲むだけなのに、正面にアドルフ様がいらっしゃると緊張で手が震えてしまう。
アドルフ様は飲まれず、私がお茶を飲むのをただじっと見てらして…



(はっ…!)



もしかしたら、このお茶にはなんらかの薬のようなものが仕込まれてるんじゃないだろうか?
噂で聞いたことがあるけど「媚薬」ってやつ。
それを飲むとなんだかすっごくエッチな気分になるとかいう…



そうか、さっき、アドルフ様が「お茶を持て!」と言われたのは、最初に決められていたセリフだったんじゃ…
そう言われたら、メアリーさんが媚薬入りのお茶を持ってくる手筈になってたんじゃない…?



(どうしよう?私…だいぶ飲んじゃったけど…)



今のところ、特に変化はないみたいだけど…
怖いよ…一体どんなことが起きるんだろう?



「アリシア…これは、ロゼッタの茶だ。
全部飲んでしまいなさい。」



やっぱり思った通りだ。
これはきっと媚薬入りのお茶なんだ。
怖いけど、アドルフ様がそう言うなら、それを聞かないわけにはいかない。



(もうこうなったらやけだ!)



私は残ったお茶をぐいと飲み干した。

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