夢幻の騎士と片翼の王女




「では、また明日…
あ…何か、ほしいものはないか?」

「え?い、いえ…なにも…」

「遠慮しなくて良いのだぞ。」

「は、はい、では明日何か考えておきます。」

「アリシア…では、また明日…」

「はい、来て下さって、どうもありがとうございました。」



手を振りながら、アドルフ様は去って行かれた。
ここに来て約一時間…なんてことない世間話をされて…それだけで帰って行かれた。
なんだか拍子抜けしてしまうくらいにあっさりと。



「亜里沙様、アドルフ様が持って来られたお花、ここに飾っておきますね。」

「まぁ、こんなに?」

大きな花瓶にいっぱい生けられた色とりどりの花…
毎朝花は届けられているけれど、それとは比べ物にならない豪華さだ。

結局、あれから特に体の変化もなにもなかった。
心配していたエッチな気分になることもなかったけど…



「あ、メアリーさん、さっきのお茶のことなんだけど…」

「ロゼッタ茶がどうかしましたか?」

あ、そうそう…ロゼッタ茶だ。アドルフ様もそうおっしゃられていた。



「ロゼッタ茶って、どういう効果があるお茶なの?」

「気持ちを落ち着ける効果が強いお茶ですわ。」

「……そうなの?」



(媚薬じゃなかったんだ…)



私の考え過ぎだったみたい。
でも、どうして?
約束の半年間がまだ経ってないからなんだろうか?
毎晩来られるようなことをおっしゃっていたけれど、いつも今日みたいにただ世間話をするだけ?
でも、どうしてなんだろう?
一応、私のことが気に入ったから側室にされたんだろうけど…
マリエッタさんの話では、側室はアドルフ様に御悦びを与えないといけないってことで、いろんなことを教え込まれて…
要は、性のはけ口みたいな存在だと思ったんだけど、今日のアドルフ様は全然そんな気はないみたいだったし…



(どういうこと?全然わからない…)



「亜里沙様、そろそろお休みになられた方がよろしいかと思いますが…」

「え?そ、そうね。」

ふと見た柱時計はもう1時を過ぎていた。
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