夢幻の騎士と片翼の王女
「あぁ…ん…はぁ……」



俺の体の下で、女が間抜けな顔をして、喘ぎ声を上げる。
このところは、ずっと楽器の練習や歌を歌っていたせいか、女を抱く気にはなれなかった。
そのことで、チャールズにからかわれたこともあったほどだ。



けれど、やはり俺には女の体が必要のようだ。
これがないと、どうしても心が寒くてたまらない。



しかし、美しい女を抱いても、心が温かくなることはなかった。
それどころか、今までのような快感さえ感じられない。



(俺は、どうなってしまったんだ!?)



「……帰れ!」

「……え?リュシアン様、今、なんと…?」

「だから、帰れって言ってるんだ!
今すぐここから出て行け!」



女は衣類を抱え、怯えたような目をして、部屋から出て行った。



完全な八つ当たりだ。
俺が王子だから文句こそ言われないが、こんなこと普通なら許されない。
気の強い女なら、ビンタのひとつふたつはくらわしていることだろう。



「畜生!」



俺は寝台を拳で殴りつけた。



諦めきれない…
亜里沙が気になって仕方がない。
しかし、亜里沙はアドルフのものだ。



(どうすれば良い?
俺は一体どうすれば良いんだ!?)



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