夢幻の騎士と片翼の王女
(ま、まさか……!?)



私の頭に浮かんだのは、アリシアの愛したあの騎士…
私のかけた呪いによって、殺されたあの若き騎士…



今までそんなことを考えたことはなかったが、もしも、リュシアンがあの騎士の生まれ変わりだとしたら…



(……まさか…そんな偶然があるものか。
たまたま、アリシアとあの騎士と私が同じ時代に生まれ、そして、出会うなんて…)



確率としては天文学的に低い数字だ。
同じ時代に生まれても、私が女だったら…アリシアとは結ばれない。
そう、同じ時代に、そして無理のない年の差で、男と女として生まれ、そして、巡り合わねばならない。
その上、あの騎士までが同じ時代に男として…しかも、私の義兄として生まれるなんて、そんなことあるはずがない。



(そうだ…私の思い過ごしだ…)



そう思う心の片隅で、まだどこかすっきりしない気持ちはあったが、今、それを確かめる手立てはない。
今、私に出来るのは、とにかく、アリシアをリュシアンに近付けない事。
そして、アリシアに子でも孕ませれば、リュシアンもいいかげん諦めるだろう。



だが、そんなことは私には出来ないこともわかっている。
私は、アリシアに愛してほしいのだ。
王子としての立場を利用して、好きにしたいわけじゃない。



(私は、アリシアの心が欲しいのだ…
私を愛し、信頼してくれたら…それ以上、幸せなことはない…)


< 180 / 277 >

この作品をシェア

pagetop